トランス脂肪酸はクローン病の原因なのか?
水素を添加したマーガリンの害を世界で初めて指摘したドイツでは、クローン病患者が出現した時期と地域が、水素を添加したマーガリンの発売開始時期と地域に一致したため、マーガリンの製造使用に規制がはられました。
クローン病は免疫系の疾患とされており、食生活がクローン病発症の一因になっていたり病気の悪化や治癒に関係するということは、症例対照研究※1などで考えられていますが、現在のところトランス脂肪酸が直接クローン病の原因になると証明するには至っておりません。
いわゆる状況証拠のみで、物証はない、といったところでしょうか。
※1 症例対照研究とは、対象の病気にかかった患者群と、患っていない集団を、特定の環境や食品に暴露させて、健康状態の経過を比較する研究。
クローン病とは
大腸や小腸の粘膜に、炎症や潰瘍が起こる病気の総称を炎症性腸疾患といいますが、クローン病はそのひとつとされています。そして、クローン病が原因で、消化管だけでなく全身にあらゆる合併症が起こり得ます。敗血症や炎症部位のガン化などが原因で死亡するケースもまれにあります。
クローン病はどんな人に多いのか
主に10~20代の若年層に見られ、発症する年齢は、男性は20~24歳、女性は15~19歳が一番多くなっています。また、発症する人には喫煙者が多く見られます。
国内の場合、男女の比は2:1となっており、男性に多いのが特徴的ですが、なお、アメリカの男女比は1:1となっています。
世界的には先進国に多く見られ、北米、ヨーロッパなど、動物性脂肪、タンパク質を多く摂る食習慣の国で生活水準が高い人がかかりやすいようです。
クローン病の症状・病変
口から肛門までの消化管のあらゆる部位に、非連続的に炎症や潰瘍が発生し、特に小腸と大腸を中心に、小腸末端部に好発します。炎症が長く続くと狭窄、穿孔、腸閉塞などを合併しやすくなります。
これら病変による自覚症状として、腹痛や下痢、血便、体重減少、全身倦怠感、発熱、肛門痛(痔ろう、裂肛など)、栄養障害、貧血などが生じます。
クローン病の原因
クローン病の要因である可能性が高い遺伝子がいくつか報告されていますが、現在のところ、その遺伝子が単体で発症するのではなく、その他複数の遺伝子や環境因子が複雑に絡み合って発症していると考えられています。
その他、
- 結核菌類似の細菌やマシンウイルスによる感染症説
- 食品中のなんらかの成分が腸管粘膜に異常な反応を引き起こしているという説
- 腸管の微小な欠陥の血流障害説
- 食事や腸内細菌に対して腸に潜んでいるリンパ球などの免疫を担当する細胞が過剰に反応しているのでは?
など、最近の研究で考えられていますが、トランス脂肪酸を含め、確かなエビデンスはありません。
日本のクローン病患者数
1976年:128人
2013年:39,799人
日本:人口10万人当たり27人
ちなみに米国では、人口10万人当たり200人
クローン病診断のポイント
- 上記症状がみられる。
- 貧血などの血液検査異常により疑われる。
- 画像検査にて所見が認められた場合に診断される。
- 肛門病変の所見。
クローン病の検査
- 血液検査
- 糞便検査
- 内視鏡検査
- 消化管X線造影検査
- 手術時に採取される検体の病理検査
クローン病の治療法
現在のところ病気を完治させる療法はありませんが、新薬開発など治療法は進化しています。
1.内科治療(1-1.栄養療法、1-2.薬物療法)が多い
腸管の安静、食事からの刺激を抑える⇒つく通・下痢・消化管病変の改善
1-1.栄養療法
1-1-1.経腸栄養
経口摂取ができない場合、消化管内にチューブを通して、流動食を投与する処置方です。抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤や、少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消火態栄養剤などを投与します。
1-1-2.完全中心静脈栄養
高カロリーの栄養液を中心静脈にカテーテルを通して輸液することです。
程度のひどい穿孔がある場合や、広範囲な小腸潰瘍が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに取られる手段です。
一般的には低脂肪で低残渣食(ていざんさしょく)がすすめられますが、主治医や栄養士と相談しながら自分に合った食品を見つけていくこと。
1-2.薬物療法
症状のある活動期:主に5-アミノサリチル酸製薬、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤、抗TNFα抗体、その他抗菌薬などの内服薬
2.外科治療
以下のような症状の場合は外科療法を選択します。
- 腸閉塞
- 程度のひどい狭窄(きょうさく):細くなる
- 瘻孔(ろうこう):つながってトンネル状になる
- 穿孔(せんこう):穴が開く
- 癒着(ゆちゃく):くっつく
- 膿瘍
外科治療を必要とする患者数の割合は、発症後5年=約3割、発症後10年=約7割、との報告があります。
消化器官温存のため、小範囲の切除、狭窄形成術、狭窄拡張などの治療が行われます。
予後(どのような経過をたどるのか)
多くの患者さんが寛解導入療法が難しくなっています。冒頭にも説明したように、合併症である敗血症や炎症部分のガン化で死亡するケースもあります。症状が落ち着いても慢性的に寛解(よくなる)と再燃(わるくなる)を繰り返し、病気は進行しています。よって継続的な薬物治療が必要です。定期検査を受けて常に病気の状態を把握しておくことが大変重要です。
